大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成6年(特わ)1854号 判決

本店所在地

東京都板橋区東新町二丁目四七番六号

株式会社高野ハウス工業

(右代表者代表取締役 高野次男)

本籍

東京都板橋区東新町二丁目五八番地

住居

同都同区東新町二丁目四七番六号

会社役員

高野次男

昭和一九年三月一六日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官長島裕、弁護人結城康郎、同冨永忠祐各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社高野ハウス工業を罰金一〇〇〇万円に、被告人高野次男を懲役一〇月に処する。

被告人高野次男に対し、この裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社高野ハウス工業(平成四年一〇月二〇日に組織変更するまでは有限会社。以下「被告会社」という)は、東京都板橋区東新町二丁目四七番六号(平成元年三月五日以前は同区小茂根三丁目八番三号)に本店を置き、建築工事の請負等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告人高野次男(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として、同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空外注加工費を計上するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  昭和六三年一一月一日から平成元年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億〇〇三八万〇三四一円(別紙1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成元年一二月二五日、東京都板橋区大山東町三五番一号所在の所轄板橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五九一三万二五四二円で、これに対する法人税額が二三八七万五四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成六年押第一五三九号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額四一一九万九六〇〇円と右申告税額との差額一七三二万四二〇〇円(別紙4のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  平成元年一一月一日から平成二年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六五二〇万〇三五一円(別紙2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成二年一二月二六日、前記板橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が四五二九万五九一三円で、これに対する法人税額が一七二〇万一六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額二五一六万三六〇〇円と右申告税額との差額七九六万二〇〇〇円(別紙5のほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  平成二年一一月一日から平成三年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億〇七一九万二二九〇円(別紙3の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成三年一二月二六日、前記板橋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五一八九万六八七九円で、これに対する法人税額が一八七〇万〇六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額三九四三万六六〇〇円と右申告税額との差額二〇七三万六〇〇〇円(別紙6のほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全部の事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  古高佑治、山口秀幸(二通)及び中込浩の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の受取利息調査書、損金の額に参入した道府県民税利子割調査書及び領置てん末書

一  検察事務官作成の板橋税務署所在地に関する捜査報告書

一  登記官作成の登記簿及び閉鎖登記簿の各謄本

判示第一及び第二の事実について

一  大蔵事務官作成の売上高調査書

判示第二及び第三の事実について

一  大蔵事務官作成の外注加工費調査書、交際費調査書、事業税認定損調査書及び交際費損金不算入額調査書

一  検察事務官作成の外注加工費に関する捜査報告書

判示第一の事実について

一  菅原邦彦の検察官に対する供述調書

一  大蔵事務官作成の当期材料仕入調査書、当期外注費調査書、諸会費調査書及び雑費調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成六年押第一五三九号の1)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の主要材料費調査書

一  検察事務官作成の主要材料費に関する捜査報告書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同押号の2)

判示第三の事実について

一  押収してある法人税確定申告書一袋(前同押号の3)

(法令の適用)

一  罰条

1  被告会社

判示第一ないし第三の各事実につき、法人税法一六四条一項、一五九条一項(第一及び第二の事実の罰金刑の寡額については、刑法六条、一〇条により、平成三年法律第三一号による改正前の罰金等臨時措置法二条一項による)

2  被告人

判示第一ないし第三の各所為につき、法人税法一五九条一項(第一及び第二の事実の罰金刑の寡額につき、前同)

二  刑種の選択

被告人につき、懲役刑

三  併合罪の処理

1  被告会社

刑法四五条前段、四八条二項

2  被告人

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重)

四  刑の執行猶予

被告人につき、刑法二五条一項

(量刑の理由)

本件は、建築工事請負等を業とする被告会社の社長であった被告人が、架空外注加工費を計上するなどして、三事業年度にわたり、合計四六〇二万円余の法人税を脱税したという事案であり、ほ脱率は通算で約四三・五パーセントである。このような脱税額、ほ脱率、犯行態様等のほか、この種事案については一般予防の必要性が高いことにかんがみると、被告人及び被告会社の刑事責任は軽視できないところである。

他方、被告人は、国税当局の査察を受けて以来、事実を認めて調査及び捜査に協力し、当公判廷においても真摯な反省の態度を示していること、被告会社は、国税当局の指導に従い、本件三事業年度分の法人税を附帯税を含め完納していること、被告人には前科前歴がないことなど、被告人及び被告会社のために有利に斟酌すべき事情も認められる。

当裁判所は、以上のほか一切の情状を考慮して、主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金一五〇〇万円、被告人・懲役一〇月)

(裁判官 安廣文夫)

別紙1

修正損益計算書

〈省略〉

別紙2

修正損益計算書

〈省略〉

別紙3

修正損益計算書

〈省略〉

別紙4

ほ脱税額計算書

〈省略〉

別紙5

ほ脱税額計算書

〈省略〉

別紙6

ほ脱税額計算書

〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例